オーディオミキシング・パンニングを考える
2019年10月31日 17時14分
パンニングは、カメラを上下左右に振る撮影テクニックとして知られていますね。オーディオにおけるパンニングは、音の水平移動とでも言いましょうか。ステレオオーディオでは、この音の動きにより、リスナーが空間の広がりを感じることができます。パンニングをすることで、サウンドをバランス良く適切に配置することができます。ベースやバスドラムなどの重低音は、基本的には真ん中に置き、他の音を左右に配置します。パンニングを考えないと、広がりがなく、何かつまったようなサウンドになってしまいます。
オーディオミキシング・編集作業
イコライザーで欲しいサウンドを作る
すべての音は周波数で作られています。イコライジングは、イコライザーの操作により、音声内にあるすべての周波数をブースト、カット、そしてバランスを調整することで欲しいサウンドを引き出すテクニックです。
通常、高音域(High)、中音域(Mid)、低音域(Low)という周波数スペクトラムに分けられます。ベースやバスドラムのような低音の楽器は低音域帯に表示されます。スネアドラムやハイハットは、中高域帯に表示されるでしょう。
イコライザーでフィルタリング
フィルターを使用して音を補正することができます。このツールで使いやすいのはハイパスフィルターとローパスフィルターでしょう。ハイパスフィルターとローパスフィルターは、信号の限界値を設定することで、不必要な信号(音)を除外することができます。
ミキシングの際は、どの音域にも注意すべき大切な情報が含まれています。楽器により全く異なるイコライザー処理が必要です。自分の耳をフルに使って、どこを調整する必要があるのかを把握することが大切です。
イコライザーでカービング
カービングは、イコライジングとほとんど同じ作業です。ただ、カービングの目的はトラック間の関係を意識した周波数の調整です。カービングをすることにより、今までは何かバラバラだった楽曲が響き始めます。カービングは、時として良いパートを削ることになります。カービングをしたトラックを単体で聴くと、おそらく以前よりクオリティーが落ちていると感じるはずです。
しかし、心配する必要はありません。カービングの目的は、トラック間の関連性を深めることです。各トラックが共鳴しない限り、いい楽曲に仕上がりません。この後の作業で楽曲は磨かれます。
ひとつの楽曲は、いわばひとつのストーリーです。すべてのトラックには、それぞれが持つ役割があります。ストーリーを豊かにし、そしてスムースにつなぐことがカービングの目的です。同じ周波数帯で、違うトラックのサウンドが干渉し合うパートは、どんなレコーディングでも存在するものです。このようなパートをカービングにより調整し、すべてのトラックが持てる役割を果たせる状態にします。
クリエイティブに「自分の音」を作る
イコライジングの総仕上げは、「自分の音」を作り出すことです。既に「自分の音」は頭の中にあるはずですから、その音をイコライザーで表現してください。オーディオミキシング全体を通じて、もっともクリエイティブなステージかもしれません。
「むせび泣くギター」「波打つような怒濤のベースライン」「透き通るような高音ボイス」「正確無比、エッジの効いたバッキングギター」など、キャラクターを突き抜けさせるステージがここです。「自分の音」を表現してください。
しかし、物事は言葉で表すほどかんたんではありません。イコライジングには無数のセッティングがあり、正解はありません。ひとつのつまみを動かしてだめなら、もうひとつ、ふたつ。神経を使う作業ですが、失敗を繰り返しながら、最高の楽曲に仕上げる努力をしましょう。努力は嘘をつきません。
オーディオミキシング・ダイナミックサウンド
ダイナミックとは、レコーディングにおいて「もっとも静かなパート」と「もっともボリュームの大きいパート」の間にあるスペースです。 たとえばスネアドラムには、長く続くことのない突然のピークがあります。これはダイナミックレンジが広いことを意味しています。オルガンの音は鍵盤が押されてから解放されるまで同じレベルのまま…これはダイナミックレンジがせまい状態です。
楽曲全体の中にもダイナミックレンジは存在します。たとえばホイットニー・ヒューストンがシンプルな伴奏の中で熱唱したとしたら、広大なダイナミックレンジがそこには存在するでしょう。
楽曲の中で、ダイナミックレンジの広いパートとせまいパートが同居した場合、共鳴感が失われます。もちろん意図的にそうする場合もありますが、この共鳴感を補うために活躍するのが「コンプレッサー」です。